2013年8月29日木曜日

私の師匠

「Rは、ちゃんとした人がいいの。」

そう泣いて訴えたRちゃんは、小学校一年生だった。

幼稚園の頃から、病気と闘っていたから病院生活はベテランで。。
生来の几帳面さとやんちゃさが混じって、
納得できないと処置をさせてくれない時があった。

看護師によっては、根競べに負けてしまって
“はいはい”とかつい言ってしまうこともある。
どうしましょう、駄目ですと、報告がきて
そんな後で“どうしたの?”と聞いたら、
大きな目に涙をいっぱいためて、言われた言葉だった。

「ちゃんとした人」は、
自分が駄々を捏ねているのではない、きちんと説明して欲しいだけなんだ。
あしらわないで欲しい。そういうことだった。

人として、相手に向き合うことの基本。
大切なことを教えてもらったひとりです。

今でもくじけそうになると、思いだす。
何事にも「ちゃんとした人」ちゃんと向き合う人で、いたいと。

グリーフケアってなんでしょう?
先に生き抜いた人たちは、例えこどもでも私の人生の師匠であります。

2013年8月25日日曜日

ペットロス


「○○の代わりなんておらんもん!そういうんちゃうもん!」

お友達のお子様Nくんが、ペットロスらしい。きっと。
可愛がっていたハムちゃん(本当はもっと可愛い名前)がいなくなって、今とても苦しい。学校にも行けない日があるらしい。
それを見ている御両親も辛く、そういうものではないと勿論知りつつ
あまりの我が子の様子につい言ってしまった。。

「また飼おうか?抱っこもすりすりもできるし、可愛いよぉ。」

今は遠くに住んでいて、私も10年以上会ってなくて
どんなお兄ちゃんに成長しているかは友人から聞くのみな訳で想像が入る話ですが。...

Nくん家はバリバリの体育会系で、根性で乗り切れみたいな?
その中でNくんだけ少し繊細なタイプらしい、(御両親もいい人よ。)
家族の中でタイプは違うのだろう。

そんなNくんにハムちゃん(くどいけど、もっと可愛い名前ね)は
さぞかし癒しだっただろう。
彼を日々支えていたのでしょう。


Nくんの感じているのは、死生観とか大切な存在とか大切なこと。
でも、まだ上手くどう感じたらいいのかさえ難しいんだよね。



 小さな命の大きな重さを今充分に感じているNくんが、
自分の人生の支えを失ってもがくNくんが、
今は会えなくなったハムちゃんがいつも心にいてくれると気付き、
少し元気がでるといいな。

カウンセリングは出来ないけど、遠くから応援しているよ。
 



2013年8月23日金曜日

一生分の抱っこと花火

「Zは抱っこが好きだから。
一生分抱っこしてあげたい、みなさんにも抱っこしてもらいたい。」


かなり前の夏、時間がないと分かって

“私も望みは捨てないでいたいけど、時間がないかもしれない。
もし、そうだとしたらZちゃんにしてあげたいことありませんか?”

担当の私の苦しい質問に「抱っこしてあげて欲しい」、そうにこっと答えてくれました。
お若いのに、しっかり受け止めて下さったお母様でした。


お母様が言って下さって、
私達スタッフも順番に抱っこして記念撮影をさせて頂いた。
みんな笑って写真を撮ってくれた。医師達も忙しい時間をぬって協力してくれた。
(実は小心者の私は、全員抱っこする前に“そのとき”が来てしまったら
 どうしよう。。そんな心配で居てもたってもいられない数日間だった。)


花火も今年は家からは見れないから、窓を花火の飾りつけにしたり
ベッドのままお散歩にも行った。

全然一生分には足りないと、みんな知っているし
私もそんなこと何の足しにもならないかもと思ったけど何かしたかった。

なんにもならないかもだけど、いつか何かになるかもしれない何かを追っていた。


今年の夏、久しぶりにお線香をあげに伺った。
花火のこと、兄弟も面会したこと、抱っこしたこと
「支えになってる」そう言って頂き、二人で思いだして泣いた。
(勿論気を使って頂いていることは、承知してますよ。)
「グリーフケア、いいと思う。」とも言って頂いた。
遅くなってごめんね、やっと報告にこれたよ。
Zちゃんが教えてくれたこと、他の人にも伝えるからね。


グリーフケアってなんでしょう?

悲しみが減るのでもありません。苦しみがなくなるのでもないのです。

でも、もう逝ってしまうこの子に伝える何か。。

遺される御家族の支えになる何か。。
いつか何かになるかもしれない何か。。





メッセンジャー

「浅原さんは、メッセンジャーだな。Yとかこども達のさ。」


そんな有難い言葉を頂いて、いやそんな普通の人なのに。。という私に

「だってさ、坊さんだって普通じゃん。ちゃんと供養すればとか言われたけどさ。
俺あの頃ずっと祈ったよ。助けてくださいって、ずっとずっと一日中さ。

でもさ、助かんなかったもんね。そう言ったら、坊さん黙っちゃってたけど。。
だからさ、浅原さん普通の人でもいろいろ話せばいいんだよ。」

と、無理やりぽいけど応援してくれた。私も、“もうそんな”とは言えなかった...


可愛い一人娘を17歳で失ったYちゃんのお父様の言うことは
宗教批判ではなく、正直なお気持ちだろうと受け止めたいから。

もし、この仕事を始めることがあったらお墓参りに行かせて頂こうと思っていた。
今日実現して、9年振りに御両親と会えた。お墓に報告も出来た。

御両親は、「まだお墓に行くのはつらい」そういいながら
私を連れて行って下さった。

 沼津駅前の花壇の揺れる花、嬉しい気持ちと複雑な気持ち。

 大切な人をなくした人が通過した感覚を、渦中の方に伝えるのは難しい。
でも、言葉で伝えるしかない時もあって。。悩んで、迷う。
先に生き抜いたこどもの生きた意味を見つけられれば、
遺された方は生きていける。

ただ、お子様をなくすということは悲しくて辛くて苦しくて。。
その道程は、そんなに容易いことではない。


グリーフケアってなんでしょう?
 別に上手く伝わらなくてもいいかな。。
私は事実を伝えていくしかないのだろうから。


 

2013年8月21日水曜日

もいちどあえる

「今なにしとるん?」
「グリーフケア?どんなんするん?興味あるわぁ、僕に教えて」

沖縄の学会で3年ぶりにあった、ある先生が相変わらずのこてこての関西弁で私にそう言って。。
みんな口に出さないが実は思った。

え?意外!。。興味あるの?...

先生ごめん、、手術しか興味ないかと思ってて(笑)
(読まれないと思って言葉が過ぎることを書き、
失礼致します。。)

でも思い返してみれば、この先生は本当は優しくて、こどもが大好き。
赤ちゃんのときから10数年診ていた患者さんを亡くしていたりする。


YちゃんもEちゃんもお姉さんになっても先生が大好きだったよね。
長い長い経過の二人がいなくなった時。。看護師達はショックが大きかったけど、
黙ってた先生は話せなかっただけなんだな。。

ゆっくり話せるお時間がなかったので、
何かグリーフの本を送ろうかと。

 葉祥明の綺麗な絵のグリーフブックが私は好きなのだけど、
あの先生にどうかなぁ。。とまた失礼なことを考えながら本棚を物色中です。


と、ここまでは以前FBに書いたのですね。
本を送った後、先生から
「僕も年をとり、臨床以外にも興味がいくようになりました。」
とメールを頂きました。
本もグリーフケアも喜んでくれていました。
また、伝わったかな?と思う瞬間でした。


グリーフケアってなんでしょう?
こうやって伝えると、大切と思い受け取ってくださる方が増えていきます。

2013年8月19日月曜日

共に生きる


「時間がないと言われても、最後の最後までそうはしないもんだよね。」

10年前に20歳で逝ってしまったAの御両親から贈り物を頂いた。
お礼のお電話をしたら、話は尽きず・・
お母様はあの頃をそう振り返られた。


Aとは7歳から13年間のお付き合いがあり、
患者さんというより妹のような存在。今も私のPCの前には写真がある。
詳細は書けないけど、私が出会った頃の病気は治ったのに
19歳で違う病に侵され、20歳で逝ってしまった。

 当時は(今もかな?)どうして二回も病気に。。と何度悔しく思っただろう。
きっと御両親は尚更に。

Aには、告知をしなかったから私たちはお別れをいうような接し方は出来なかった。
お別れを言えたら違ったかは、もう分からないし
よかったとか、悪かったとかはお母様の言うとおりそういうことではないのだろう。


 「もっと何かしたかったとか、抱きしめたかったとか思うけど
そういうんじゃないんだろうねぇ。」
「あの頃、いろいろ取り乱して口走った気がする。ごめんねぇ。」
「話がつきないわ。。会いたくなっちゃった。。」
23年分の話は尽きず、今度静岡まで会いに来て下さるらしい。

何年経とうが、お子様を亡くすということはこういうことなのだろう。
御両親は、そのお子様とずっと共に生きていく。


グリーフケアってなんでしょう?

 想像や理解は出来なくていい、でも少し社会で分かち合えたらいいのにと思う。
悲しみは減らないけれど、苦しみを背負った人だけが苦しいというのはどうなのだろう。


そんなことを思いながら、まだ何にも出来ない自分へのふがいなさと
御両親の気遣いへの嬉しい気持ちとの複雑な想いでメソメソしながら
頂いたかまぼこを(復興支援を兼ねてかまぼこらしかった。)食べた。
そして、こういう夜がまた私の糧になる。



2013年8月18日日曜日

わたしがあなたを選びました。


「Sは今の状況になることもわかっていて、それでも生まれてきたくれたのだと思いました。」

「Rはこんな母を選んできてくれたのかな。
たくさんのごめんねがありがとうに変わりました。」

数々の御両親の力を引き出してくれた、この一冊です。


誕生の喜びと同時に、病気や障害の現実と向き合うご両親もいらっしゃいます。...
特にお母様は「元気に生んであげられなくてごめんね」と落ち込んだり、
「妊娠中何か悪かったかな?」とご自分を責めたりすることもあります。




こういうとき、この絵本の力をよく借りました。
赤ちゃんからの、お子様からのメッセージです。
不思議なもので、赤ちゃんはお話しないのですが
お父さん、お母さんには伝わったりするんですね。


文章の中の言葉は、本を読んで頂いたお母様から頂いたお手紙の一文です。
Sちゃんのお母様は、どうしてこんなことにってずっと考えられてました。
Rちゃんのお母様は、受け止めても受け止めても涙が止まりませんでした。

“いっぱい泣いてもいいよ。その代わり起きたら、笑ってあげるんだよぉ。”

お昼寝中の雑談の時、言った私の一言をずっと覚えていてくれました。
「ママが笑顔見せてあげる。」「あの言葉忘れません。」
そう言って、赤ちゃんに笑顔で話しかけてくれるお母さんに成長していったなぁ。


グリーフケアってなんでしょう?
いのちの大切さと絆の強さを実感します。


 「わたしがあなたを選びました。」


2013年8月17日土曜日

ブラックジャックによろしく


「さとちゃんがやりたいこと、難しくて解んないけどさ。
これ読んでみたんだよね。
そいでさ、必要なことなのかなって思った」

 「今これ無料で読めるからさ。」
と、目を合わせずぶっきらぼうに言うかなり年下の心の友。


 以前まで私は看護師の仕事のこと、グリーフのことはプライベートでは話さなかった。
どうせ言っても、現場にいない人にわかんないだろうと。
目の前であの小さないのちが消える瞬間の気持ちは、
伝わらないのではないかとそう思っていた。

何年か前。。担当していた患者さんが亡くなって、
どうしても納得できなくて。。珍しく人前で泣いた私に...

「いつも何も話さないしさ。
分かんないかもだけど、言ってくれたらちゃんと受け止めるから。」
そう言ってくれた。

伝えたら、受け止めている人もいるだろうか。。

人に伝えてみようかという気持ちをくれたのも彼だった。

グリーフケアってなんでしょう?
まだ若く社会や医療やグリーフなど興味がない、
そんな彼が言うひと言が今日も私を支えていたりする。
 
 

2013年8月16日金曜日

グリーフブック


「わかった!Kちゃんは天国にいったんだね。よかったぁ。」

小さい弟をなくした小学校低学年のお姉ちゃんとお話ししたときのこと。
一緒に看取ったのですが、何がおこったか分からず不安そうにしていたんです。

時間に限りがあると分かってから、病室に一緒に泊まってもらっていました。
その瞬間も、一緒に見送りました。

お父様、お母様は当然泣かれている。
可愛い弟に何が起こったんだろう?
でも、なんて聞いたらいいかわからない。そんな様子でした。
 


 御両親と相談して子供向けの死生学の絵本を読みました。
別室で私と二人。。
パタンと本を閉じたとき、にこっとしてそう言いました。..
何故か、ニコニコのお姉ちゃん。

私の方が戸惑ってしまって。。思わず、「えっ、天国ってどこにあるの?」
「え?お空の上だよ。」とお姉ちゃんが上を指差して教えてくれました。

「あぁ、よかった。」
「天国ならいいよねっ。」

あれから、10数年未だに無理にすりこんでしまったかなぁと反省したりするのですが。
同じ時期の朝、こんな青い空を見ると、天国あるかも。。と思ったりもします。


このお姉ちゃんも、もう大きくなっているんですよね。
どんなお姉さんになっているか、時々想像するけれど。。もう会うこともなくて。

グリーフケアってなんでしょう?
遺された方の人生にずっと必要なのだと思います。
お姉ちゃんも、きっと弟のことを忘れず優しい女性になっていると信じているのです。


2013年8月13日火曜日

からすのパンやさん

「今頃Kは何してるかしら。。?
天国でも浅原さんにからすのパンやさん、読んでもらっていたらいいのにな。。」


お子様のお母様から頂いたお手紙にこう書いてありました。
もう10年以上前のこと。
我が子を病院において帰らなければならないお母様には、
帰宅後の夜の様子の印象も強かったのかもしれません。


私も大好きだったこの絵本、病院でよく寝る前の読み聞かせに読みました。

Kちゃんからはよくリクエストがあって、寝る前に何回も何回も読んだね。
いろんな形のパンがでてくるから、どんなの作ろうか盛り上がったり
「ぼく、パン屋さんになろうかな?」って夢を聞いたり。


 想い入れがありすぎて、買えなくなっちゃた一冊...


あの頃はまだ日本にグリーフケアなんて概念もあまりなくて、
頂いたお手紙にお返事も書けませんでした。
自分の気持ちも整頓できなくて。。

あの頃よりは成長できてるのか、私?と思うこともあるけど
転職して開業して、見えない道を歩こうとしてるから成長してると信じよう。

一冊の絵本とあのこ達から頂いたもの。
今も上手く言葉にならないのだけど、大切なもの。
ずっと変わらず、Kちゃんは私を支えてくれている。


グリーフケアってなんでしょう?
原点に戻るとき、必ず思い出すKちゃんとこの一冊です。

写真: 「今頃Kは何してるかしら?天国でも浅原さんにからすのパンやさん読んでもらってたらいいのにな。。。」
十年以上前の話ですが、あるお母様からそうお手紙を頂いたことがあります。
私もこどものとき大好きだったこの本。よく病棟でも読み聞かせしました。

Kちゃんからはよくリクエストがあって、寝る前に何回も何回も読んだね。
いろんな形のパンがでてくるのですが、どんなのがいいか盛り上がったり
「パン屋さんになろうかな?」って夢を聞いたり。

想い入れがありすぎて、買えなくなっちゃた一冊。

あの頃はまだ日本にグリーフケアなんて概念もあまりなくて、
頂いたお手紙にお返事も書けませんでした。自分の気持ちも整頓できなくて。
あの頃よりは成長できてるのか、私?と思うこともあるけど
転職して開業して、見えない道を歩こうとしてるから成長してると信じよう。

一冊の絵本とあのこ達から頂いたもの。
今も上手く言葉にならないのだけど、大切なものたくさんある。

さぁ、自分に活入れて今日も笑顔でいくよっ。



2013年8月12日月曜日

ブログ始めます。

グリーフカウンセリングivy代表の浅原聡子です。

グリーフケアってなんでしょう?
もしかしたら、永遠のテーマかもしれません。

このブログでは、グリーフのことや私が出会った人やご家族のこと
先に生き抜いたこども達のことを綴っています。

FBに書いていたものもあるのですが、「知ることが大事」
そう言って頂くことが多くなりブログの形をとらせていただくことになりました。

想い出というわけではなく、いろいろな方のいのちのかけらから
グリーフを分かち合い、支えあうことが出来ることを願って。




グリーフカウンセリングivyのHPはこちらから
http://www.gcivy.info/